社会保険労務士 菊池 麻由子
前回は事例を元に、本当の意味での“働き方改革“とも呼べる一つの形をお伝えしましたね。
今回も違う事例としてIT会社の社長からの相談を元に、会社も社員も幸せになる、最適な働きかたについてさらに見ていきましょう。
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それからすぐに調べ、会社の研修として学べるeラーニング教材のサービス導入を決定しました。ちょうど昇給の時期だったので面談をおこない、今までの仕事のフィードバックや今後の期待、そして会社ができるサポートを伝えました。
Iくんはフィードバックがなかったために、自分は能力が足りていないのではないか、今後この会社でやっていけるのか自信がなくなっていたと打ち明けてくれ、この会社でやっていくという決意を新たに転職の考えを思い直してくれました。
いつかは教育・研修制度の導入をと考えてはいたけど行動できていなかった、今回Iくんから教えてもらい良い機会になった、と社長はおっしゃっていました。
その会社では、今後は社員に仕事を任せる時、それに必要なスキルなどのアドバイスをし、サポートしていくことを決心しました。さらに一人一人の成長を上司が支援し、評価や給与に結びつける制度をつくり、事業の成長につなげようと現在本気で取り組んでいます。
世の中にはお互いのことを知らず、ちょっとしたボタンの掛け違いから、起こった事象に対して全く違う結果になってしまうことは多々あります。
今回あげた2つの事例に対し、もし退職を伝えてきた社員の申し出通りに何もアクションをしていなかったらどうなっていたでしょうか?会社と社員が幸せな関係性を築くことができたでしょうか?
共通するのは、それぞれの社長が社員からの声に耳を傾けたということです。
もちろん、なんでも社員の声を聞けばいいということを言うつもりはありません。
そして、耳を傾けることが今までできていなくても心配はありません。社長も上司も社員も完璧な人はいないのですから。気づいたその時から関係性の修復、いえ、再構築は十分に可能なのです。
「人は一瞬一瞬、その人にとっての「最善」を選択していると思って学生と関わっています」
とある大学教授がおっしゃっていた言葉がずっと私のなかに残っています。その教授は過去、授業が自分の思う通りに行かないこともあり悩んだそうです。
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いかがでしょうか。Iくんと社長、お互いの認識のズレから生じた問題でしたが、最終的には社長が思っていたことを形にすることでより良い結果へと繋がっていきました。
私の思い出の中に、印象的な言葉を残してくれたある大学教授の授業が思い通りにいかず悩んでいた、というものがあります。
しかし、自分の見方を変えたら学生のことがわかるようになり、自分の感情が俯瞰でき、授業を工夫したり声をかけたりするうち学生とも良い関係が築けるようになってきたそうです。
なるほどと思い、私も感情が高まることがあるとき「その人の最善だったのだな」と見方を変えることによって、穏やかに対応できるようになってきました。
人間は生まれながらに親から授かった素晴らしいパーソナリティがあります。それは尊いものです。そして大きくなるにつれ、学校や会社、コミュニティといった社会のさまざまな組織の中でたくさんの影響を受けていきます。
影響を受けた積み重ねが何層にもなり複雑に絡み合って形成された結果、そこで生み出されたパーソナリティもその人の一面として見ることができるでしょう。
私からみて良くないこと、常識はずれだと思っていること、それは私の価値観です。相手にとっては、その行動をすることが自身を守るためであり、無意識で最善と判断したその人なりの理由があるのでしょう。
そのように「人間尊重」という精神をお互いが持ち、相手の声に耳を傾けるという小さな行動を起こしていくこと。そんな行動が広がっていけば、あなたもあなたと関わる人たちも皆幸せになり、世の中がもっと良くなると思いませんか?
人間同士、お互いの認識のズレは話をしてみないとわからないし埋められません。
しかし、何をどのように話したら良いのかわからない、うまく伝えられない。そのような方はたくさんいらっしゃいます。そのような時は一人で解決しようとせず得意な人の力を借りる、または外部の専門家の力を借りるなど、違う方法を探してみるのが良いでしょう。
まずは一歩の対話から、誰もが活き活きと輝いて働ける職場が増え、未来の子供たちが希望を持てる世の中になっていくのではないでしょうか。
オールライフケア合同会社 提携パートナー
社会保険労務士法人ネクステップ菊池麻由子